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近視大国日本では、「近視=視力が悪い=目が悪い」というイメージが浸透しており、視力を偏重する傾向にあります。

しかし本当に近視は悪いものなのでしょうか。

近視を単純に悪いものと捉え、視力を上げることに固執すれば思わぬ落とし穴があるかもしれません。

この記事ではそもそも近視がどういったものなのか、なぜ近視になるのかを説明し、上手な近視との付き合い方をご案内していきます。

読み終える頃には、いたずらに近視を嫌い、視力を求めることのリスクが理解できているでしょう。

近視の原因

近視とは無限遠(遠くを想像してもらえればOKです)像が網膜上ではなくその手前の位置で合ってしまう状態を指し、その原因は軸性近視、屈折性近視、核性近視の3つに分けられます。

一般的には成長や加齢による軸性近視が主な原因と言われていますが、近年では長時間のパソコン作業が当たり前になっていることに加え、スマートフォンの普及など眼を取り巻く環境が激変しており、一概に原因を決め付けることはできません。

軸性近視

角膜から網膜までの長さ(眼軸長)が長いことにより発生する近視です。

眼軸長が長くなる原因としては、成長や加齢に伴う眼球の大きさの変化が主な原因と考えられています。

屈折性近視

角膜や水晶体の屈折力が強いため、像が網膜上ではなくその手前の位置で合ってしまうことタイプの近視です。

屈折性近視の一つに偽近視(仮性近視とも言います。最近ではスマホ老眼なんて言い方もありますね。)があります。

これは勉強、読書などの近方作業を続けることにより毛様体筋が異常に緊張して水晶体が厚くなったままの状態が続くことで発生します。
遠くを見た時もピントが網膜の前にあるため、遠くがぼやけて見える一時的な近視のことです。

このタイプの一時的な近視は、遠見訓練や調節麻痺剤の眠前点眼で治ることがあるとされていますが、その病態や治療効果、予後については、眼科の学会でも意見の分かれるところです。

核性近視

加齢によって水晶体の核が硬化し、屈折力が強くなる近視が核性近視です。30歳以後になって近視になる場合、核性近視によることがあります。

近視の種類

単純近視

大部分がこの近視に分類され、適度の眼鏡装用によって良好な視力が得られます。
人間は生まれた時はほとんどの人が遠視ですが、成長するにしたがって次第に正視になります。

このまま大人になれば一生正視ですが、一部の人はその後も眼軸が伸びて近視になっていきます。
現代においては近くを見る時間が非常に長くなることが多いため、前述のスマホ老眼が定着し、近視が進むこともあります。

実は近視は40歳を超えると少しずつ遠視方向に度が進んでいく(言い換えると近視の度数が弱くなっていく)傾向にあります。
この加齢に伴い現われる遠視を加齢(老人)性遠視と言い、特に50歳代から60歳代にみられます。
そのため、40代以降の方で近視の眼鏡を作成する際は今後の近視の変化も加味して度数を決めることをお勧めします。(知らないあいだに近視が弱くなり、結果的に過矯正のメガネになっていたなんてことが起こりえます…)

病的強度近視

強度の近視で、幼児期から発生し、近視は進行性で、適度な眼鏡を装用しても良好な視力は得られないことがあります。

この近視は眼球が大きさが変化し眼軸長が長くなることにより発生しますが、この変化に伴い網膜が引き伸ばされてしまい、薄く脆弱な状態となってしまいます。(引っ張って伸ばしたビニール袋が破れやすくなるのと似ているかもしれませんね。)

単純近視より網膜の変性や裂孔、円孔、網膜剥離、黄斑出血など発症しやすい傾向の眼であるため、定期的な診察が必要となります。

近視にはデメリットばかりなのでしょうか?

ここまで読んできたあなたはどう思ったでしょうか。

やっぱり近視になると不便だな…

そんな風に感じていることでしょう。
しかし果たして本当に悪いことばかりなのでしょうか。

確かに近視になると遠くが見づらくなるので、演劇鑑賞やスポーツをする際などには不便に感じることでしょう。

しかし、近視であるということは近くにピントが合っている状態であるため、PC作業や読書など手元に近いものを見る際の負担を抑えることができるというメリットがあるのです。(手元に近いものを見る際に目にかかる負担についての詳細は『視力が良くても眼鏡が必要な3つの理由』をご参照ください)

また、近視になるということはこの十数年で大きく変化した眼を取り巻く環境に適応した結果とも言えます。
仕事ではパソコン作業が当たり前になり、それ以外の時間ではスマホを触っていることが多いのではないでしょうか。
このような環境では、遠くがよく見える眼というのは眼精疲労の要因のひとつとなり、むしろデメリットになってしまうのです。

これらのことから、弊店ではひたすらに高い視力を求めるのではなく、目的や作業時間などを考慮して各々の場面で「楽に」見える眼鏡をご提案することを重視しております。
近視が進み、視力が下がったからといって単純に遠くまで良く見える眼鏡をかけてしまうと、近くを見る負担が大きい状態に逆戻りしてしまい、更に近視が進行するという負の連鎖にもなりかねません。

あなたもこれから先に眼鏡を作ることがありましたら、その際には「楽に」見えることが大事なんだったよなぁなんて思い出して頂けると嬉しく思います。

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