「私は近視だから、老眼になっても眼鏡を外せば近くが見えるし大丈夫」――そう思っている方、多いんじゃないでしょうか?
確かに、近視の人は目の中に老眼鏡を持っているような状態です。そのため、40代以降の老眼が始まってからも眼鏡を外して裸眼で見れば読書やスマホなどもこなせることが珍しくありません。
でも、その状態で長時間過ごすことには見えない危険なリスクが潜んでいます。
今回は、近視の方が老眼期に裸眼で近くを見続けることの本当のリスクについて、詳しくお話ししますね。
なぜ近視の人は老眼でも裸眼で近くが見えるのか?
近視は「目の中の老眼鏡」
まず、なぜ近視の人が老眼になっても裸眼で近くが見えるのか、そのおおまかな仕組みは以下の通り。
- 遠くにはピントが合わずぼやける
- でも、近くにはピントが合いやすい
- つまり、「近くを見るのに特化した目」のような状態
これは、まるで目の中に老眼鏡を持っているような状態なんです。だから、老眼(調節力の低下)が始まっても、裸眼で近くが見えてしまうんです。
「便利」に見える状況の裏側
「眼鏡を外せば近くが見える」、これは一見便利に思えますよね。
- 老眼鏡を買う必要がない
- 掛け替えの手間もない
- お金もかからない
でも、この「便利さ」の裏側には、大きなリスクが隠れています。
裸眼で近くを見続ける3つの危険なリスク
リスク1:左右の度数差で見え方のバランスが崩れる
両目の度数は異なっていることが多く、その場合は見え方のバランスが崩れてしまうんです。
例えば、
- 右目:-2.5D(中等度近視)
- 左目:-1.0D(軽度近視)
老眼の人がこの状態で40センチぐらいの距離を裸眼で見ると、
- 右目:ちょうど良く見える
- 左目:少しぼやける
という左右差が生じます。
それでは左右差が続くとどうなるのでしょうか?
- 片目に過度な負担がかかる
- 眼精疲労、頭痛、肩こりの原因に
- 両目でものを一つに見ようとする働きが弱くなり、片目を無意識に使わなくなることも
リスク2:乱視で見え方が不安定になり疲れやすい
乱視が入っていると見え方が不安定になり疲れやすくなるんです。
乱視があると、
- 文字の輪郭がにじむ
- 文字によって見え方に差が出る(3と8など)
- 長時間見ていると目が疲れる
裸眼で見ている限り、この乱視の影響はつきまといます。「見えているつもり」でも、実は不安定な見え方で目に負担をかけ続けているんです。
リスク3:寄り目(輻輳)の負担は変わらずつきまとう
これが最も見落とされがちな、そして最も危険なリスクです。
ものを見る際はピント合わせだけではなく、両目を見たいところに合わせる視線合わせも大切になってきます。
近くを見るときに必要な2つの動きは以下の通り。
- ピント調節: 水晶体を厚くして焦点を合わせる
- 寄り目(輻輳): 両目を内側に寄せる(対象物が近くなる程に寄り目の負担は増します)
近視である分だけ近くを見る際のピント調節の負担は和らぎますが、寄り目の負担は変わらずのしかかってくるのです。
近視の方は「1.ピント調節」は楽になりますが、「2.寄り目」の負担は全く減りません。むしろ、次に説明する理由で、負担が激増してしまうことが多いんです。
最大の危険「必要以上に近づいて見る癖」と急性内斜視
裸眼だと無意識に「近すぎる距離」で見てしまう
近視の人が裸眼で近くを見る際は必要以上に近くで見てしまうことが多いため、気づかない間に寄り目の負担を激増させてしまいがちです。
近視の方が裸眼で近くを見る際、こんな状況になっていませんか?
- スマホを20cm以内で見ている
- 本を顔に近づけて読んでいる
- パソコン画面に顔を近づけている
なぜこうなるかというと、
- 少し離れるとぼやけて見える
- より「はっきり見たい」という心理が働く
- 無意識に対象物に近づいて見てしまう
近づくほど寄り目の負担は指数関数的に増える
寄り目(輻輳)の負担は、距離が近くなるほど急激に増えます。
つまり、「ちょっと近づいた」つもりでも、寄り目の負担は何倍にも跳ね上がっているんです。
また、この状態が続くと寄り目で見る癖がついてしまい、急性内斜視になるリスクもあります。
急性内斜視とは、
- 突然、片方の目が内側に寄ってしまう状態
- 物が二重に見える(複視)
- 日常生活に大きな支障が出る
近視の方が裸眼で近距離作業を続けることは、このリスクを高める可能性があるんです。
正しい対策:眼鏡で見え方を整え、適切な距離で
近視の方が老眼期に入ったときは、眼鏡で見え方を整えて、適切な距離で見るようにすることをお勧めします。
適切な眼鏡を身に着けることで以下の効果が期待できます。
- 左右の度数差を補正してバランスを整える
- 乱視を矯正して安定した見え方に
- 適切な作業距離(30~40cm)で快適に見える度数設計
- 必要に応じて寄り目をサポートするプリズム補正
また、眼鏡を使うことで、自然と適切な距離(およそ40センチほど)で見る習慣を身に着けることで、寄り目の負担を適正範囲に抑えることができます。
詳細な測定で「あなたに最適な近用度数」を
左右差・乱視・輻輳力を総合的に評価
当店では、近視の方の老眼対策として、以下の詳細な検査を行います。
- 左右の度数差の正確な測定
- 乱視の度数・軸度の精密測定
- 調節力の残存量評価
- 輻輳力(寄り目の力)の測定
- 作業距離と環境の確認
これらの測定により、「裸眼で見えているけど実は負担がかかっている」状態を明らかにし、最適な対策を見つけます。
段階的な慣れ方サポート
「今まで裸眼で見ていたのに、急に眼鏡をかけるのは違和感がある」という方も多いです。
そういった方には段階的なアプローチをご提案しています。
- まずは軽めの度数からスタート
- 作業用として短時間から使用
- 慣れ具合を見ながら調整
- 必要に応じて度数を最適化
無理なく、快適に移行できるようサポートします。
こんな症状があれば、裸眼近業のリスクサイン
以下のような症状がある方は、裸眼での近業作業を見直すサインかもしれません。
- 片目の方が見やすい、または見にくい
- 無意識にスマホや本を顔に近づけている
- たまに文字が二重に見えることがある
- 近くを見た後、目の奥が痛い
よくある質問(FAQ)
Q1: 近視だから老眼にならないというのは本当ですか?
A1: いいえ、誤解です。近視の方も老眼(調節力の低下)は起こります。ただし、裸眼で近くが見えるため気づきにくいだけです。
Q2: 裸眼で近くが見えるなら、眼鏡は不要では?
A2: 「見える」ことと「目に負担がない」ことは別です。左右差・乱視によるにじみ・寄り目負担のリスクがあるため、眼鏡での矯正をお勧めします。
Q3: 遠近両用眼鏡は必須ですか?
A3: 必須ではありません。目の状態やライフスタイル・個人の好みに合わせて、最適な選択肢をご提案します。
Q5: 今まで裸眼で問題なかったのに、今から眼鏡をかける必要がありますか?
A5: 「今まで問題なかった」ように見えても、実は目に負担がかかっていた可能性があります。将来のリスクを減らすためにも、一度測定することをお勧めします。


