「視力検査ではそこそこ見える」「裸眼でも日常生活はなんとかなる」

でも、「夕方になると目がすごく疲れる」「頭痛がすることもある」

そんな遠視の方は少なくありません。

その「なんとかなる」の裏側で、実は目がずっと全力で頑張り続けていることも多いんです。普段から目を開けているときは常にピント調節で力んでいる状態。裸眼で過ごしているとその状態が続いて力んで見る癖がついてしまい、正確な度数測定が難しくなります。それだけではなく、大きなピント調節が続いていると調節性の輻輳が発生して、内斜視気味になってしまうことも。

遠視の人は裸眼でも視力が出るため、眼鏡をかける気にはなりにくいですが、目のことを考えると眼鏡の常用がおすすめです。今回は、その理由を分かりやすくお話ししますね。

遠視の目は「常に力んで見ている」状態になりやすい

遠視の見え方は「ピントを頑張って合わせている」世界

遠視というと、「遠くがよく見える目」と思われがちですが、実際はそうとは限りません。遠視の目は、本来の焦点が網膜よりも後ろにある状態です。そのままだと、遠くも近くもボヤっとしています。

そこで登場するのが「ピント調節」の力。遠視の方は、この調節をフル活用して、網膜上に焦点を無理やり合わせています。

  • 遠くを見るときは、頑張ってピントを合わせる
  • 近くを見るときは、さらに頑張ってピントを合わせる

つまり、目を開けている間じゅう、ピントを合わせるためにずっと力んでいる状態になりやすいんです。

裸眼で過ごすことで「力んで見る癖」が定着する

裸眼で「それなりに見える」状態で過ごしていると、目は常に調節を続けることに慣れてしまいます。

  • 本人は「普通に見ているつもり」
  • 実際は、ピント調節の筋肉(毛様体筋)が常に緊張
  • それが長く続くと、「力んで見る」が当たり前になる

この「頑張って見る癖」が、後で大きな問題を引き起こします。

遠視の”潜伏”で、正確な度数が測りにくくなる

遠視の潜伏ってどういうこと?

遠視の潜伏とは、本来あるはずの遠視の度数が、測定のときに正しく表に出てこない状態のことです。

なぜ起きるかというと…測定のときも、目がピント調節を頑張り続けてしまうからです。

本来は、

  • +○.○D(遠視)の度数が必要

となるべきところが、調節が強く働いてしまうと

  • 測定上は「ほとんど遠視がない」ように見えてしまう
  • あるいは「軽い近視っぽく」見えることすらある

つまり、「本当の状態」と「測定結果」にギャップが生まれてしまうんです。

裸眼生活が「正確な検査」を邪魔してしまうことも

普段から裸眼で頑張っている遠視の方ほど、この潜伏が起きやすくなります。

  • 日常生活で力んで見る癖がついている
  • 測定のときも、無意識にピントを頑張ってしまう
  • その結果、「あなたはそこまで遠視ではありませんね」と判断されてしまうことも…

これでは、適切な度数の眼鏡が作れません。本当は遠視をきちんと補正してあげた方が目は楽なのに、「そこまで度数はいらないはず」と誤解されてしまうケースもあるんです。

調節の頑張りすぎで、目が内側に寄ってしまうことも

大きなピント調節が続くと「調節性の輻輳」が発生

ピントを合わせる「調節」と、目を内側に寄せる「輻輳(ふくそう)」は、本来セットで働く仕組みになっています。

近くを見るときは、

  • ピントを近くに合わせる(調節)
  • 目を内側に寄せる(輻輳)

遠視の方は、この「調節」を常に使っているため、それに連動して輻輳も働いてしまうのです。これを「調節性輻輳」といいます。

内斜視ぎみになってしまうリスク

調節性輻輳が続くと、目が内側に寄りやすくなり、

  • 目が内斜視ぎみになる
  • 両目で一つのものを見るのが難しくなる
  • ダブって見える、目が疲れる、頭痛がする などの症状が出ることも

特に、子どもや若い世代の強い遠視では、**「調節性内斜視」**として問題になることがありますし、大人でも「なんとなく目が寄る感じ」「両目で見ていると落ち着かない」といった違和感につながることがあります。

「見えているから大丈夫」とは言えない遠視の目

遠視の人が眼鏡を避けがちな理由

遠視の方は、こんなふうに感じていることが多いです。

  • 「裸眼でも視力は出ているから、眼鏡はいらない」
  • 「近視みたいに困っていないし…」
  • 「眼鏡をかけると逆に違和感がある気がする」

確かに、遠視の方は裸眼でも視力検査良い結果が出てしまうことが多いので、「まだ眼鏡をかけるほどではない」と思いやすいんです。

でも、「見えている=目に負担がない」ではありません。「見えるようにするために、目がずっと頑張っている」可能性があるんです。

目のことを考えると、眼鏡の”常用”がおすすめな理由

遠視の方にこそ、きちんと度数を合わせた眼鏡の常用をおすすめしたい理由はここにあります。

  • 裸眼:常に調節で力んでいる
  • 眼鏡常用:レンズがピント合わせを肩代わりしてくれる

その結果、

  • 目の筋肉の負担が大幅に減る
  • 夕方の疲れや頭痛が軽くなる
  • 両目のバランスが整いやすくなる
  • 内側に寄りやすかった目も、落ち着いて使えるようになる可能性

「見えにくくなってから眼鏡をかける」ではなく、「目を守るために眼鏡をかける」という発想が、遠視の方にはとても大切なんです。

まどかで行う、遠視の方へのやさしい検査とご提案

 調節のクセを見ながら、無理のない度数を探します

遠視の検査では、単に度数を測るだけでなく、

  • 調節力がどれくらいあるか
  • どれくらい力みやすいか
  • 両目のバランスはどうか

といった点も丁寧に確認していきます。

遠視の潜伏が疑われる場合には、

  • 調節をゆるめる工夫をしながら測定したり
  • 日を改めて再測定したり

といったステップを踏むこともあります。

いきなりの”完全な遠視矯正”ではなく、段階的な慣れも大切に

長年裸眼で頑張ってきた遠視の方の場合、いきなり100%の度数を入れると、

  • 「よく見えるけど、なんだか落ち着かない」
  • 「裸眼よりも少しぼやける」
  • 「レンズを通して見ると物が歪んで見えて疲れる」

と感じることもあります。

まどかでは状況に応じて、

  • 最初は少し控えめな度数からスタート
  • 慣れ具合を見ながら、必要に応じて調整
  • 処方度数を考慮した両眼バランスや斜位の有無もあわせてチェック

といった形で、段階的に”楽な見え方”へ移行できるようサポートします。

こんな症状があれば、「遠視の潜伏」が隠れているかも

もし、あなたもこんな症状に心当たりはありませんか?

  • 視力検査ではそこそこ見えるのに、目がとても疲れる
  • 夕方になると目の奥が重だるい、頭痛が出る
  • 近くを見るときに、眉間にしわが寄ってしまう
  • 無意識に少し力んだ表情になってしまい不機嫌だと誤解されてしまう
  • 「見えているはず」なのに、仕事や読書で集中が続かない
  • 子供の頃から「視力が良い」と言われてきた

こうした症状は、潜伏している遠視や、調節の頑張りすぎが関わっている可能性があります。

ただし、以下の場合は、まず眼科での精密検査をお勧めします。

  • 急な視力低下や強い痛み
  • 片目だけの見えにくさ
  • 見え方が急に二重になった

よくある質問(FAQ)

Q1: 遠視なのに視力検査で1.0以上出るのはなぜですか?
A1: ピント調節を頑張ることで、一時的に焦点を合わせて見えているからです。ただし、その分目の負担は大きくなっています。

Q2: 遠視の潜伏はどうやって見つけるのですか?
A2: 調節をゆるめる工夫をしながら何通りもの方法で測定したり、両眼のバランスや調節力を詳しく見ることで、潜んでいる遠視の度数を推定していきます。

Q3: 遠視でも、眼鏡は常にかけた方がいいですか?
A3: 個人差はありますが、「目の疲れ」「集中のしづらさ」がある方は、常用した方が目の負担軽減につながるケースが多いです。

Q4: 内斜視ぎみと言われたことがあります。遠視と関係ありますか?
A4: 強い遠視や大きな調節が関係している場合もあります。調節性の内斜視かどうかを含めて、眼科との連携が大切です。

Q5: 遠視用眼鏡をかけると視力が落ちることはありませんか?
A5: いいえ、むしろ目をリラックスさせ、目の健康を守ります。適切な度数であれば視力が落ちることはありません(かけはじめは裸眼の時の癖で力みが残ってしまい一時的に視力が落ちることはあります)。