先日いらしたI様は老眼が始まるお年頃で、デスクワークもそれなりにあることから、ひどいときには薬が必要となる程の頭痛に襲われていました。
お測りさせて頂くとそこそこの近視ではあるものの、矯正後は2.0の視標まで見ることができ視力的には何の問題もない目をしております。
ただ、やはり年齢相応の老眼もあり、近くを見る際の寄り目運動のバランスも少々くずれていたため、それらを考慮した遠近両用の眼鏡にしたところ『バッチリ良く見えるようになったよ!!』とおっしゃって頂けました。
装用テスト時の反応が良かったので、これでI様のお困りも解消できるだろうとこの時は思っていたのですが…
いざお渡し当日。
仕上げた眼鏡をかけて頂くと、『手元はいいけど、何だか遠くがぼやける時がある』とのお言葉。
今回は初めての遠近両用眼鏡であったため、単純に慣れの問題と思い見方のコツ(遠近両用は普通のレンズと異なり、物を見る際に少々コツが必要となります)などをお伝えし、その日はお帰り頂きました。
2週間ほど経ったころ、『やっぱり遠くがすっきり見えないんだよね…』とご来店。
きちんと毎日慣らしもして頂いたようで、これは単純な慣れの問題ではないと判断し、分析に乗り出すのですが…
同じ度数を検眼枠(レンズを入れ替えることのできる仮の眼鏡)で再現して見てもらうと、『以前検査した時と同じように快適に見えます!』という反応。
そうなると度数の問題である可能性は低くなります。
フレームの条件(上から見たときのフレームのカーブや横から見たときの角度など)が悪さをしているのかと思い確認してみるも、問題がありそうな箇所は見当たらず。
思いつく箇所は全て調べ尽くしてしまったので、正直な所どうしたものかと頭を抱えていたのですが、I様のお悩みを解消するためにも諦めるわけにはいきません。
検眼枠と実際に出来上がった眼鏡との違いについて、改めて無い頭を振り絞って考えていると、1つ思い当たることがありました。
今回I様のレンズを発注するにあたり、少しでも見え方を良くするためにカスタム発注(眼鏡フレームの情報(レンズの大きさや黒目の位置など)を元にして、検査で導き出した度数を最適化する処理)を行っていたのですが、もしかするとこれがI様にとっては逆に作用してしまったのではないかと思ったのです。
I様にはその旨を説明し、再度カスタムなしで作成したレンズを試して頂くことになりました。
これで駄目なら後がないなと思っていたため、再度のお渡しをする際はかなりのドキドキ状態に。
恐る恐る新しい眼鏡をお渡しし、感想を聞いて見ると…
『検査した時と同じようにバッチリ見えるよ』
この瞬間は本当にホッとしたのを覚えています。
自分の予想が当たったこと自体にもホッとしたのですが、ようやくI様の望んでいたものをお渡しすることができたことが本当に嬉しく、安心した瞬間でした。
カスタム発注はレンズメーカーとしても品質をより向上させるためのオプションサービスとして自信を持って提供しているため、まさかそれが悪さをするとは思わず、今回は本当に勉強になりました。(これまで同様のカスタム発注をした眼鏡にはみなさんご満足されていたため、本当に「まさか…」という思いです)
十人十色、個人個人で最適なものは違う。必ずしも理屈通りになるとは限らないのだと改めて実感しました。
I様、ご迷惑をおかけしましたが、見放さずに最後までお付き合いくださりありがとうございます!
これで少しでも日々の視生活が楽になることを願っております!!